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海洋プラスチック問題について考えてみた その1

今回は海洋プラスチック問題について触れてみたいと思います。

まず、私が海洋プラスチック問題を認識するようになったのは、同じ!という方も多いかもしれないのですが、ウミガメの鼻にストローが刺さっていた映像や海鳥の亡骸から多量のプラスチックがお腹に入っていたとみられる画像を見てからでした。

そして、このままでは2050年には、海洋プラスチックが魚の量をも超えてしまうという、これまたセンセーショナルな内容がダボスで開催された世界経済フォーラムという会議で示されたことで一気に注目度も上がったと感じています。

では、プラスチックが海に流出することで、何が問題となっているかをまず整理したいと思います。

① 汚染
 ゴミが流れ込むことでの汚染、海岸に打ち上げられるプラスチックによる景観汚染も含まれます

② 海洋生物への影響
 もっとも印象が強い誤食、絡まり、外来生物の移送
 *誤食個体の発見率が高いのは海鳥だそうです

③ 汚染物質の付着による生物への影響懸念
 PCBなど有害物質を吸着する →生物の体内に取り込まれる→生物濃縮

そして、まだマイクロプラスチックに関しては、悪影響への全体像が見え切っていない状況です。

では次に、これらの問題を発生させた海洋プラスチックですが、一体どのようにして海に流出しているのでしょうか。
直接海に流出してしまうもの、そして川を経由して海に流出することが研究発表などでわかっています。

ある研究論文では、
世界の川から流れ出る総量は200万トン/年
そのうち90%は世界の122本の川から流出しており、
さらに、122本の河川中、103本はアジアに集中している
という発表もあります。
今、アジアから最も海洋プラスチックが発生していることになります。

さらに、どのくらいの量が海に流出しているのか、ということについては、jambeck氏らの論文から引用されていることが多いデータとして、2010年において管理されずに捨てられたプラスチック重量と、海に流出した量の推計値が有名なので、こちらから日本のデータをご紹介します。

このデータを引用すると、日本において管理されずに捨てられたプラスチックの重量は14万3,121トンと推計されています。
管理されずにという事は、回収されなかったのはもちろん、ポイ捨ても入ります。
そしてここから海洋に流出したと推計される量が2万~6万トンとされています。
管理されずに捨てられたプラスチックのうち、海に流れたと推計されている割合は14%~42%だったと推計できます。

そして、2010年の日本における廃プラスチックの発生量は945万トンでした。
ということは、発生総量(945万トン)のうち管理されずに捨てられたと推計される量(14.3万トン)の割合は1.5%で、さらに、そこから海に流出したと推計される量(2~6万トン)の割合は0.2%~0.6%と推計できます。

さて、ここで一つ考察を。
私の自宅から出るごみはしっかりと分別して、指定のゴミ袋に入れて、ゴミ置き場に置きます。
* ここでネットをかけておかないと、カラスに荒らされています(こういうのも管理されない中に入っていく可能性がありますね^^”)
そして、産業廃棄物に関しては、企業はしっかりと分別し、保管し、回収され、リサイクルもしくは処分場へ行きます。不法投棄を防ぐために法整備がなされ、厳しく管理されています。

何が言いたいかというと、日本のゴミ処理は管理されていて、インフラとしてしっかり機能しているということです。
その日本で、管理されずに捨てられたプラスチックが総量の1.5%の14.3万トンも出ており、うち2~6万トンが海に流出しているのです。
次回お話ししようと思うのですが、これをアジアで見ると、国内でのごみ処理のインフラが整備されていない国が多い状況です。
ということは、海に流出する割合も増えると考えられます。

いかがでしょうか。
14.3万トンという数字はかなり多い数字です。プラスチックは軽いので、体積にすると相当なボリュームです。
ただ、総量の1.5%と聞くとどうでしょうか。
色々な情報を見ると日本はたくさんプラスチックを作っているし、使っているので、もっと多いイメージがありませんでしたでしょうか?

この2010年の数字で見たときの1.5%がもっと多い割合だと、対策によってすぐに効果が出るかもしれませんが、日本では地道な対策が必要だという事も見えてきますよね。
例えば、家計費を節約しようとしたときに、支出の30%を占める割合の項目だと対策しやすいかもしれませんが、支出の1.5%の項目だと対策が難しい場合が多いというイメージです^^

ということで、2019年に環境省が策定した「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」では、この管理されずに捨てられたプラスチックが海に流出しないようにする、また海から回収するといった対策も対症療法として入っています。

では、最後に、海洋プラスチック問題を解決するための本質的な対策は何なんだろうというと、「プラスチックの総量を減らすこと」となりますよね。

コロナ禍でも露呈しましたが、衛生面でも優秀なプラスチックをすぐになくすことは難しいです。
ただ、レジ袋等を極力減らしていくことは可能ですし、企業においては代替素材の開発も進んでいます。
また、海洋の問題は日本だけでは解決できないため、アジア諸国へのゴミ処理インフラ整備での協力も進んでいくでしょう。

SDGsの目標下で、さすがに共有地の悲劇は起こらないで欲しいです。

次回は、日本国内からの海洋流出が少ないのは、アジアに輸出しているからではないか?という事について
アジアからの流出が多いという事も含め、「考えてみたその2」を書きたいと思います。

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